【認知症の被害妄想にはどう対応すべき?種類別の対応方法】
カテゴリー:スタッフのブログ
2023年3月9日
認知症の症状の一つとして、『被害妄想』があらわれることがあります。
「物を取られた」「いつも悪口を言われている」と言われたら対応に困ってしまいますよね。
介護者に対しても、身に覚えのない疑いをかけられることもあります。
ショックで動揺してしまい、思ってもいないことを言ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
このような被害妄想をもたらす背景には何があるのか、それにどう対応していけばよいかご紹介します。
被害妄想の背景
被害妄想の多くは、認知機能の低下に加えて症状による苦しみ、周囲への不満など
様々な感情が影響し合うことで現れると言われています。
認知症や老化への不安、孤独感、悲しみなど深い感情が隠れていることも少なくありません。
相手を傷つけようと悪意を持っているわけではなく、助けを求めるメッセージのような意味合いがあります。
無意識に、身近で親しい間柄の人に訴えかけようとして、その人を「加害者」としてしまうことも多いのです。
自分を「被害を受けている」という安全な立場に置きながら、必死に訴えかけています。
被害妄想の種類
・物盗られ妄想
特に多くの方が引き起こしがちな妄想です。
「家族にお金を盗られた」「通帳を盗まれた」など金品を盗まれたと訴える様子が見られます。
家族や看護師、ヘルパーなど介護に関わっている身近な人がどろぼう扱いされることも少なくありません。
家族やヘルパーなど、比較的身近な人に対して症状が出る場合が多いのも特徴です。
記憶力の低下によって、物をどこに置いたかわからなくなったり
お金を使ったことを覚えていないことが原因で起こります。
その記憶障害を認めたくないという気持ちから、「誰かが盗った」という考えに辿り着く方が多いようです。
・見捨てられ妄想
認知症の症状が進行していくにつれ、家族やヘルパーなに支えられて生活を送ることになります。
迷惑をかけて申し訳ないという気持ちから、邪魔な自分は見捨てられるという妄想に繋がることがあります。
自分でできることが減り、周囲からのサポートに負い目を感じる時期に起こりやすい被害妄想です。
この妄想が原因で家族を信用できなくなり、部屋に引きこもってしまう方も珍しくありません。
引きこもることが多くなってしまうと、認知症の悪化や躁うつ病の発症リスクも高くなってしまいます。
・嫉妬妄想
認知症の初期段階で起こりやすい症状です。
見捨てられ妄想と同様に、自分は必要とされていないという不安感や孤独感が原因であると考えられています。
自分は必要とされていないという思い込みから、「配偶者が浮気している」など被害妄想が起こります。
不安が増大すると、配偶者が訪問看護師やヘルパーに相談している様子を見ただけで浮気をしていると信じ込んでしまうのです。
パターン別の対応方法
《物盗られ妄想への対応》
まずは否定も肯定もせず、「大切なものがなくなって困っている」ことに共感して聞きましょう。
泥棒扱いされてしまった場合、つい否定したくなってしまうと思います。
しかし、否定されることで怒りや悲しみが強くなり、妄想がひどくなる場合があります。
気持ちに寄り添って一緒に探し、もし先に見つけた場合は見つけやすいところに置き直し、ご自分で発見してもらってください。
本人に納得してもらうことを意識しながら関わることは、妄想を落ち着かせるために有効です。
《暴力・暴言を受けたと言われた場合の対処法》
暴言や暴力などの被害妄想への対応は注意が必要です。
妄想ではなく事実であるという可能性があることを認識しながら話を聞きましょう。
はじめから被害妄想だと決めつけずに、きちんと状況を確認し慎重に対応するようにしましょう。
対応を誤ると、本人だけでなく犯人扱いされた人の気持ちを傷つける危険があります。
良からぬ誤解を生ませないためにも、ケアマネージャーなどの第三者などを介して一人で抱え込まないようにしてください。
自分自身が暴言や暴力などの被害妄想の加害者として対象にされている場合は、
精神的な安定をはかるためにも心理的、物理的な距離をとるようにしましょう。
《見捨てられたと言われた場合や浮気を疑われた場合の対処法》
見捨てられたと言われたり浮気を疑われたりする場合には、
本人の不安な気持ちが強くなっていることが考えられます。
症状が進行して物忘れがひどくなっていることへの不安や、自分ができることが減ることへの無力感が原因です。
本人が得意なことや無理なくできることを依頼し、本人の自信を取り戻すことを提案してみましょう。
自分が役に立つ存在であると感じてもらうことが重要です。
人間の心は奥深く複雑で、被害妄想を消失させるのは困難で時間がかかります。
その間に認知症の症状も進んでしまい、ご本人と周囲の方の苦しみがいっそう増してしまうこともあります。
大切なのは妄想を消してしまうことではなく、妄想があったとしても、ご本人とご家族が安全で安心して過ごせることです。
無理に対応したり、完全に解決しようとせず、短時間でも他の人の力を借り、
必要に応じて介護や医療のサービスを利用して、なんとかやり過ごす工夫もまた必要です。
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